再生の事例

3000万赤字であった会社の再生事例

再生前直近期の主なデータ

年間売上:約11億円

損益:3000万強の営業赤字

金融機関からの借入金:約5億強

純資産:ー4億6000万

従業員数:200数十名

事業の概要

主な当社事業は、人材派遣と部品、金型等の製造をする2部門です。
部門別損益は、再生以前は正確に把握しておらず(部門別損益データは社内及び税理士共に作成していない)、経営者の感覚として人材部門は黒字であるが製造部門は赤字ではないかというコメントでした。また、銀行への返済は既に滞っており且つ従業員への給与支払いのため社会保険や税金の滞納が起こっていた。経営者は銀行からの借り入れに対して個人保証を行っていた。

再生をするにあたりに対処すべきポイント

  1. 事業の見直しにより損益は黒字転換が可能か
  2. 黒字化達成には事業をどのように再編する必要があるのか
  3. 黒字転換を達成しても5億強の返済を行うことが可能か
  4. 返済が困難であれば、他に事業継続の選択肢があるのか
  5. 銀行借入に対する経営者の個人保証への対応は

再生計画構築のための作業工程

当社は前述したように、大きく分けて二つのシリアスな問題が存在した。一つ目は、事業が利益を生みだせるのかという点(上記12)。二つ目は、銀行借入に対する返済能力と個人保証を行っている点。この2点をクリアーするために以下の作業を行った。

再生コンサルタントの役割
  1. 部門別の事業損益データの作成と分析
  2. 部門別損益を把握後、事業の再編計画の作成
  3. 再編計画に基づく具体的な作業工程の作成
  4. 黒字化の達成は可能と判断されたが、5億強の返済は困難であると結論づける

弁護士の役割
  1. この結果、新会社を設立し現会社の事業を新会社に譲渡し、事業継続と雇用の確保を選択
  2. この選択を進めるにあたり、弁護士とコンサルタントによる新会社が払うべき事業の譲渡代金を算出
  3. 新会社設立のアドバイス
  4. 現会社の借入金の処理と個人保証をなくすための対応

譲渡代金と新会社資本金

当初は、経営者の友人等に資金の提供を依頼するも、知り合い関係からのファイナンスは困難であった。その後、再生ファンドに当案件を持ち込み、出資の依頼と交渉を行う。ファンドは、私たちの作成した詳細な再生計画を精査後、再生が可能であると判断し出資に漕ぎ着ける。

再生の実行

  1. 部門別損益を作成した結果、人材派遣は年間1000万の黒字、製造部門は4000万の赤字であることを確認
  2. 製造部門の赤字削減プランと実行
  3. 実行過程で再生ファンドからは、製造部門廃止の意見が出されるものの、人材派遣単体の会社ではリーマンショック等が起こった時の派遣切りリスクに対応出来ないことを主張し製造部門はトントンを目指すことで了承を得る。
  4. 部門別損益データ分析後、顧客別損益分析を行う。その結果、製造部門の最も大きな問題は、創業以来取引があり且つ売上の30%近くを占めていた大口取引先が年間1000万弱の赤字であったことが判明
  5. 新会社の経営者には、顧客分析データをその大口取引先に渡し、単価のアップを要請する。この時の一大決心は、単価アップに応じてもらえない場合はその大口顧客との取引を停止することであった。同時に、単価アップに応じない他の取引先からの受注も行わないことを徹底した。
  6. 交渉を辛抱強く行い、その過程で少しづつ単価アップに漕ぎ着ける。製造部門の赤字幅が縮小し始め、新会社は初年度の後半から会社全体の月次損益が黒字化する。この結果、1期目の売上は9億弱に減少したものの営業黒字を達成
  7. 2期目では、大口顧客との交渉が更に進展し、製造部門の月次損益もトントンに。2期目では営業利益が1000万を超える会社となる。